もしあなたがインドを訪れたら、多くのヨーガ行者達が同じように旅をしながら生活していることが分るでしょう。中には富裕層出身の者もいれば、有名大学で高度な教育を受けた人もいます。通常、日本の人達は仏陀だけがそうしていたと思っていますが、インドの悠久の歴史の中では、何百万人もの人々がそうしてきました。今もその文化は引き継がれています。
私は沢山の場所を訪れ、多くのマスター達に会い始めました。そしてようやく、ヨーガの首都として世界的に知られているリシケシと呼ばれる場所に辿り着きました。私はこの地に、他とは異なる波動を感じたので、しばらくそこへ滞在しようと決めました。私はシバナンダー・アシュラムに長く滞在し、ヨーガニケタン・アシュラム(精神を訓練する場所)でヨーガを教え始めました。私の義務は、毎日約1時間、クラスでヨーガ教えることでした。その代わりにアシュラム側は、食べ物と家と少しのおこずかいを、私に提供してくれました。あとの時間は本を読んだり、スピリチュアルな講演に行ったり、沢山のマスターに会い、瞑想し、ガンジス河のほとりでヨーガをしたり、泳いだり、ただ寝転がっていたり…と、まるで天国にいるような日々が過ぎて行きました。
リシケシでは、100カ国以上もの、世界中から集まってきた人々と出会うチャンスがありました。
多くの外国人達と出会った後、私は諸外国の事や、精神性に関してのインドと諸外国との関わりについて、より深く明確に理解するようになりました。
私は、何人かの日本人にも会い、日本は西欧諸国と基本的に異なった考え方、つまり、仏教や輪廻転生を信じ、インドと非常に近い結びつきを持ち、そして技術的にも物質的にも高度な国だと知りました。私は、海外からの旅行者と多く取引をしている旅行業界の人達から、「日本人は地球上でもっとも礼儀正しい人々だ」と聞いていました。そして私の敬意は益々日本に向いて行きました。ただ一つ私を驚かせたのは、日本は最も豊かな国の1つとして知られていながら、毎日多くの自殺者がいて、そして鬱病率も非常に高いという事でした。 私は、そのことが理解出来ませんでした。なぜなら日本には、最新の技術と仏陀のようなマスターからの哲学があるのだから、人々は最も平和で幸福な国のはずだと思ったからです。
また、別の観点から考えれば、仏陀の思想を5%でも理解する人なら、自殺など考えつくことのない平和な人生を送れるはずです。成功を収めたこの国で、ここまで国民が希望を持てなくなってしまった理由は一体何なのでしょうか。私は、「仏陀の思想が強力に働かないのか、それとも何かが欠けているのだ」と考えるようになりました。“何が欠けてしまっているのだろう?”その疑問は、私の心の中で謎に包まれた問題となりました。
私は、日本に関しての情報を更に集めました。近代の日本について私が集めた情報によると、仏陀はもはや名ばかりなものとなっていて、現代の日本の人々は、忙しい人生の中で少しも仏陀の重要性を得ることが出来ていないということ。長い歴史の経過と共に、仏陀の知恵は薄暗く影を潜め、現代の人生において、人々は古代の思想といかなる繋がりも感じることが出来なくなっています。ヨーガもここでは精神的な目的の為ではなく、健康の為のものです。体や健康や美を改善する為のヨガセンターは多くありますが、インドに何百万と存在するアシュラムのような、魂を改善する為のヨガセンターはどこにもありません。
私は、日本の小さな技術でさえ、かなりのレベルでインドを救える(日本政府はインドで多くのプロジェクトを援助しており、現に多くの製品がインドで有名です)のと同様に、少しでもインドの精神性の活かし方が伝えられ、もしそれが適切に実行されるなら、日本を大きく変える可能性を持っていると考えました。
インドからは多くのマスター達がアメリカや他国へ教えに渡っていますが、言語や文化の違いから、通常、マスターは日本へは訪れないし、活動のために滞在するといったことはありません。すなわち、日本に存在している仏教や精神性に関するどんな情報も、インドからの直伝ではなく、ヨーガや占星術に関する知識が西洋諸国を介して日本に来たように、中国や他国から伝わって来たものなのです。
私はスピリチュアルな指導をする先生達に、あなた方の誰かが日本へ行って教えるべきではないかと話し始めました。多くの師とこの問題について話をしました。
一度、私はある師に対しても、アメリカや他国には出向くのに、なぜ日本へは行かないのかと、同様の問題を投げかけました。しかし、彼の答えは私の予期せぬものでした。彼は言いました。“君は一日中ガンジス河の岸辺に寝そべっているではないか。君が行くべきだ。ガンジス河の岸で寝そべっているだけでは、誰も助けられないぞ。年寄りにそれは出来ないのだよ。若い君がやるべきだ。”
“言葉も文化も分らない、見ず知らずの土地へ行って、どうやって人々に私のメッセージを伝えろと言うのですか?”
“とにかく行ってみなさい。神が、まだ赤ん坊が生まれる前から母親に母乳を用意するように、君の活動に対する人々の協力も既に決められていることがある。そして、これも覚えておきなさい。君が向上させたいと思う魂ではなく、神が向上させたいと思う魂のみが向上させられていくという事を。だから、たとえ結果がどうであれ、君が敗者の気持ちを味わう必要はない。ただ神の手の中で、その道具となりなさい。地球上の各地には多くの高度な意識を持つ魂が住んでいる。日本にもいるはずだ。彼らがきっと助けてくれる。”
私は、言われたことを実行する方向へと考えを進ませました。それ以来、私は更に多くの日本人と関わるようになりました。そして、生徒の一人と日本に辿り着いた時、私は既にインドと日本の違いを知っていました。 |